東東京大会・準決勝、明青学園の投馬と東秀高校の三田による熱い投手戦。試合は投馬の暴投がきっかけとなり、東秀高校が決勝に駒を進めたのだった。それからしばらく経った立花家に、勢南高校の西村がやってくる。東東京大会・決勝で投手を務めた西村は、対戦相手の東秀高校が二番手、三番手の投手を出してきたことに不満げだ。エースの三田が準決勝で延長14回を投げ、決勝にほとんど出てこなかったことでテンションが上がらなかったとブツブツ言う西村に、投馬は「負け試合の責任を人のせいにするな」と一喝する。一方、草むしりをする春夏の姿を見つけ、明青学園の野球部グラウンドにやってきた走一郎。最近、野球部への入部希望者が増えており春夏は困っているらしい。東東京大会の活躍で注目を集めたこともあり、野球を知らないが野球部に入るだけで人気者になれると勘違いしている生徒が大多数。「戦力になるわけがない」と春夏は呆れた様子だ。しかし、走一郎は入部届の中にある人物を見つける。そんな春夏と走一郎の姿を眺めていた立花家の電話が鳴る。相手は母の真弓「交通事故にあって病院に居る」というものだった。電話をとった音美は「大げさなものではないようだ」と告げるが、「すぐに病院へ行くように」と促す西村に押されて、投馬と音美は病院へ向かうことになる。結局、ケガをしたのは一緒に歩いていた人で真弓は何ともないようだ。病院の廊下を歩いていた投馬は、傷だらけの錦に声をかけられる。話をした翌日、学校で野球部への入部を断られる錦の姿を目撃し……。
傷を増やして登校してくる錦に声をかける投馬だったが、「俺に構うな」と突き放されてしまう。錦の顔は傷だらけだが、手には殴り返したような痕はない。錦が夏休み前よりも身体が引き締まっているように感じた投馬は、今川に「あの傷はケンカなのか?」という疑問を伝える。思い返してみれば錦が監督を殴って退部した中等部での状況も、投馬がやってしまう可能性があったのだ。一方、トレーニング中の錦をつけ狙う不良たちの姿があった。自分たちと手を切ろうとしていることに腹を立て、しばしば錦を襲っていたようだ。そんな不良たちを一掃したのは、彼を気にかけていた二階堂だった。最後まで野球部への入部を諦めない錦の思いも通じ、今川は「顔の傷が治ったら練習に出て来い」と告げる。錦も加わり、軌道に乗るかと思われた明青学園野球部。しかし2年のブランクは相当のもので、理想的な状態になったのは秋季大会も終わった11月だった。錦だけでなく、投馬も調子が良かったわけではない。本格的に甲子園を目指すとなると、グチグチ選手のプレーに文句を言う大山監督ではなく、もっとちゃんとした監督を探すべきでは、などという話も出てくる。しかし大山監督のノートを見た今川たちは、あることに気が付き……。
3月を迎え、明青学園中等部でも音美たちの卒業式が行われた。駒に「音美ちゃんが女子高校生になるということは学園ラブコメ解禁」と言われ何だかソワソワした様子の投馬だったが、結局はいつも通りの立花家。その頃の赤井家では、甲子園で活躍する兄・智仁の姿を両親が喜んでいた。一方で遼は「応援に行かない」の一点張りで何か思うところがある様子。それからしばらく経ったある日、友人たちとお花見に参加するため公園に向かった音美。しかし指示された場所に到着しても他の参加者たちはおらず、近くに花見ができそうなところもない。地図を送って来た亜里沙は、他の参加者に音美たちのことを聞かれても話をはぐらかしていた。どうやら花見に参加できないよう画策していたらしい。そんな中、パトカーの音が聞こえだし、「店員を刺したコンビニ強盗が凶器を持ったまま逃走中だ」と花見客たちがザワザワとし始める。犯人の向かったとされる場所は、亜里沙が音美たちを誘導した場所で――!?
新年度を迎えた明青学園野球部。新戦力と言えば夏野くらいで、元々のメンバーたちも安定しているわけではない。そんな練習中、錦はギャラリーの中に中等部野球部の黒柳監督を見かけたような気がする。一方、音美は亜里沙に身に覚えのない言いがかりをつけられていた。遼がサッカー部に入ったと思っていた亜里沙は、マネージャーとして入部届を出していた。しかし遼の姿はなく、亜里沙は影響力のある音美に「さっさとサッカー部に入るように言え」と詰め寄りに来たのだ。しかし、中庭で話す投馬と遼の姿を見つけ音美は「手遅れかもしれない」と伝える。結局、遼は野球部に入った。音美も前から何となく気が付いておりそれほど驚かなかった。少し前、バッティングセンターで練習する遼の姿を投馬と智仁は見ていた。好きなはずの野球を遼がやらなくなったのは、智仁が続けていたからだ。埋められない1年の差、そして2人の溝が決定的となったのは遼が大切にしていた犬を交通事故にあわせてしまったことだった。心身ともに疲れていた智仁は「どうやって謝ろう」と考えているうちに謝る機会を逃し、これまで無視し続けてきた。「おれを悪者にしてあいつをくどけ、才能は保証する」そう言い残し、智仁は去っていった。そうして遼が加わった明青学園野球部に新たな変化が……?
ここ数日、明青学園の近くで不審者が目撃されるようになる。そんな中でも学校生活は普段通りだ。新年度のクラス替えも済み、投馬は駒に誕生日アピールをされる。次の日、部活棟でサプライズパーティーの準備をしている野球部員たちを見つけた駒は浮足立つが、それは春夏のバースデーパーティーだった。駒の誕生日を忘れていた投馬は、音美に駒用のケーキを買ってくるように頼む。しかしいくら待っても音美は帰ってこず、呼びに来たのは走一郎だった。慌てて家を出た投馬と走一郎が目にしたのは、病院で警察と一緒に居る音美だった。居眠り運転の車に突っ込まれた音美は、寸前のところで通りかかった男に助けられ膝の擦り傷ですんでいた。その男はというと、車にはねられたにもかかわらず全身異常なしということだったが……。その後、立花家にやって来た男は、1ヶ月前から記憶喪失らしい。どうやらここ数日、明青学園周辺で目撃されていた不審者の正体は彼のようだ。立花家で面倒を見ることになった彼は、なぜか明青学園が気になるようで……?
夏の甲子園以来となる明青学園対海旺西高校の練習試合。去年の試合で投馬を温存していたことが不満だった海旺西高校の監督は、今回の試合で正々堂々駆け引きなしの真剣勝負を求めた。明青学園はエースの投馬が投げ続けてリードしている一方、海旺西高校野球部員たちは監督のプレッシャーもあってか力んで上手くプレイができないようだ。そんな試合を立花家から眺めていた、音美の命の恩人である記憶喪失の男。男は投馬がマウンドを降りたのを確認すると、立花家に来ていた西村にキャッチボールに付き合うよう声をかける。庭に出てキャッチボールを始めた2人だったが、男は投げられたボールを避けたり大暴投をしたりと、到底野球をやっていたと思えない……。しばらく経った立花家の庭にはテントが張られ、男はそこで寝泊まりするようになった。男は捜索願も指名手配もされていなかったようで、英介が身元保証人になって定期的に病院に通うことになったのだった。そんな中、男は喫茶店に行きたいと言い出す。学生時代、このあたりに居たような気がするということで何かを思い出しそうな様子だが……。
明青学園に健丈高校から練習試合の申し込みが来る。健丈高校は、のびしろのある明青学園に得体のしれない不気味さを感じているようだ。わざわざ手の内を明かすこともないと断ることにした大山監督。ところがまんまと健丈高校の作戦にハマり、試合の日程が決まってしまう。明青学園と因縁のある健丈高校との対戦、さらに健丈高校の方から申し込んだ練習試合ということで周囲はざわついていた。当日、マウンドにエースである投馬の姿はない。試合前のロードワークに出かけた投馬と駒は、ひったくり犯に遭遇。身柄を確保した後、警察に協力していたのだ。手の内を明かしたくない大山監督は「捜査への協力は市民の義務だ、慌てる必要はない」と投馬たちに伝えていた。代わりに投げるのは“ただのピッチャー”1年の夏野。「初回で試合を壊してやれ」と選手を送り出した健丈高校の小宮山監督だったが、予想外に翻弄される。
明青学園と健丈高校の練習試合が始まった。その一方、偶然ひったくり犯の身柄を確保した投馬と駒は、警察に協力した後グラウンドに送ってもらっていた。そこで目にしたのは無失点で粘る夏野の姿。4回表、そろそろ夏野の運も尽きかけているというところで投馬がマウンドに上がる。今や全国区となった健丈高校の打線だったが、成長した投馬のピッチングに手も足も出ない。しかし7回表、再び打席が回ってきた智仁は球を見切っており、打球はどんどん伸びていく。それを追いかけた遼が見事キャッチして明青学園は事なきを得た。アウトとなりベンチに戻って来た智仁は納得のいかない様子。それは弟である遼に捕られたことではなく、投馬の球を“あの手応えで打ってあそこまでしか飛ばせなかったこと”だった。その後も健丈高校の打者たちに球を捉えられるようになった投馬。さすが健丈高校……小宮山監督も安心した様子。しかし健丈高校の打者たちが球を捉えられているのは、球種とコースを口に出しているキャッチャー・走一郎の仕業だった!
練習試合が終了し、立花家に帰って来た走一郎と音美。走一郎は、投馬の球種とコースを健丈高校の打者に聞こえるよう口に出していた理由を「投馬が慢心しないようにだ」と言うが、音美に「ウソだ」と一蹴される。投馬が慢心して努力をやめてしまうような男ではないと、走一郎は知っているはずなのだ。結局、走一郎は素直に「嫉妬してイジワルした」と白状するのだった。そんな家の中では、大山監督と英介の明青野球部OB会が盛り上がっていた。校歌を歌いだす二人。庭のテントでそれを聴いていた記憶喪失の男は、つられて校歌を口ずさんでいて……!? 6月、夏の地方大会前の予想の中で明青学園の前評判は非常に高かった。しかし“明青学園の追っかけ”間崎は浮かない様子だ。話を聞いていた記憶喪失の男が理由を問うと、明青学園にエースが現れたとき悲劇が起きると語り始める。走一郎と音美の実父・澤井圭一、そして30数年前の“上杉和也”……その名前を口にしたのは記憶喪失のはずの男だった。彼はなぜ“上杉和也”を知っているのか? 果たして記憶は戻るのか……? そして夏が近づいてきたある日、明青学園野球部ではラーメンをかけた紅白戦が開幕する!
明青学園野球部で始まったラーメンをかけた紅白戦! 紅組・春夏チームと白組・大山監督チームがクジを引いて決まったチームに分かれ試合を開始する。まず白組の投馬が投げることになるが、キャッチャーの野々村が全力の球を捕ることができず、思うようなピッチングができない。一方、紅組のピッチャー・夏野は調子がよさそうだ。ところが試合中に球を素手で捕ってしまったことで突き指してしまう。紅組は夏野以外にピッチャーが居ないはず。これは白組の勝利……と思われたが、マウンドに上がったのは走一郎。さらにキャッチャーは、中学時代に走一郎が入るまで正捕手をしていた今川と、安定のバッテリーになる。果たして、紅白戦の結果は⁉ 一方、圭一の墓参りにやって来た真弓は、墓の前に立つ男性を見かける。男性は明青学園の美術教師である千本木で、高校時代に圭一と何か関係があったようだ。立花家で真弓からそのことを聞いた英介は、何かを思い出そうとしていた……。
パンチの散歩をしていた投馬と音美は、小説家の月影渚先生こと春夏の母・大山みどりとその担当編集に呼び止められる。月影が連載している高校野球物の展開に煮詰まっていて、二人に話を聞きたいとのこと。主人公の家族構成は立花家そのもので、短編用に考えた話を連載に――となったことで苦しんでいるらしい。担当編集の運転する車に乗り込んで外の風景を見ていた投馬と音美は、春夏が誰かを平手打ちしている場面に遭遇。月影に報告してみると「その男には脈があるか、本物のダメ男。うちの娘はどうでもいい男を殴ったりしない」と言われ、さらに困惑することになる……。一方、立花家に居候中の記憶喪失の男は、公園で千本木に声をかけられる。彼曰く、記憶喪失の男は「マカオから来た『ハリマオ』と名乗り」「悪の組織と闘うために、インドの山奥に修行に来た」と言っていたらしい。謎は深まるばかりだ。翌日、学校で春夏に声をかけられた投馬はドキリとする。春夏が平手打ちしていた相手が走一郎だと思っていたためだ。その走一郎も寝坊したり、ブツブツ独り言を言って階段でコケそうになったりと様子がおかしい。部活中も上の空で練習にならない状態を見かねて、部室へ向かった投馬は「絶対に許さない!」と怒りに任せて叫ぶ春夏に遭遇してしまう。さらにそこへ走一郎がやってきて……!? 慌てる投馬だったが、二人は文化祭用の短編映画に出演するため必死にセリフを覚えていただけだった。すべての元凶は、映画研究会の顧問に酒でつられた大山監督で……。
昼食をとっていた投馬は、千本木に声をかけられる。4月に明青学園へ転勤してきた千本木は、投馬に「きみの父親のことで話がある」とのこと。千本木が語ったのは走一郎と音美の実父・澤井圭一についてだった。走一郎を呼びに行き、改めて語られたのは過去――東東京大会準々決勝でのできごと。澤井と千本木は接触し転倒。千本木は、結果的に澤井の選手生命を奪ってしまった。話を聞いた走一郎は「二人とも被害者だ」と言葉をかける。父親のことが気になっていた走一郎は、相手のその後についても調べていた。千本木も心に傷を負い、目の前に人がいると勝手にストップがかかってしまうイップスに悩まされて野球を続けられなくなっていたのだ。その後、接触する危険のない陸上短距離に転身。そちらで才能を開花させた。「そのことを一番喜んでくれたのも澤井だ。そういう男だった」と語る千本木に、「知っている」と声をかける走一郎。あの試合のキャッチャーが今の野球部監督・大山、リリーフ投手の息子がエース・投馬、そして澤井の息子がキャッチャー・走一郎。「澤井圭一が明青学園の甲子園出場を見せたい人たちを呼んだのだ」と言う走一郎は、甲子園に行くと力強く伝えるのだった。一方、音美はいつも目の敵にされているはずの亜里沙に誕生日会に誘われ……?
今年も、全国高等学校野球選手権・東東京大会が開幕! シード校の明青学園は、初戦の相手となるチームの偵察をしていた。大山監督と春夏が向かった試合の内容は「どっちもどっち」といった印象。一方、投馬と走一郎が向かった野上高校VS白尾高校の試合では、7回が終わって5点差と実力的には野上高校の方が上の様子だ。しかし白尾高校も、しつこく諦めないプレイ、一丸のベンチ、その選手たちを嬉しそうに見守る監督……投馬が思わず「応援したくなるチームだよ」と言ってしまうほど雰囲気が良いチームだった。投馬が大きな声を出して目立ってしまったことで、途中で帰ることになる二人。点差もあり、初戦の相手は野上高校だろうと思い込んでいた投馬たちだったが、その後に知らされたのは「白尾高校が8回9回で追いつき、延長11回でサヨナラ勝ちした」ということだった。白尾高校は、攻撃力、投手力ともにさほど目立っていないが、練習試合も含めて勝っても負けてもほぼ接戦という記録を出すチーム。清掃活動やボランティア活動にも熱心で地元商店街での評判がとてもいいらしい。それらの話を聞いていた記憶喪失の男は「初戦でつまずくとしたらそんなチームかもしれない」と言い、明青学園ファンの間崎を不安にする。しかし、間崎が応援に行った明青学園VS白尾高校の試合は、一方的なものになっていた。6回コールド、勝者は明青学園!
全国高等学校野球選手権・東東京大会。明青学園の次の相手は、今時珍しいヤンチャな生徒の集まった飛竜北高等学校だ。自由な校風で、体格にも運動神経にも恵まれた者が多く、格闘競技では全国レベルの選手を多く輩出している。野球部も数年前まではベスト8に入る常連校。しかし何度も繰り返される対外試合禁止処分、3年前に就任した戸井田監督は学校側から徹底的な改革を任された。改革は成功し、礼儀正しいチームとなった飛竜北野球部は……まったく勝てなくなった。彼らの強さは乱暴と無礼がセットだったのだ。戸井田監督が責任を取るということで元通りとなった飛竜北野球部は、マナーはともかく個々の技術と能力は本物。戸井田監督曰く、創部以来最強のチームとなっていた。明青野球部の先発投手は、まだ投球のコントロールが上手くできていない夏野。大山監督は3点取られるまで変えないと約束していた。夏野のコントロールのなさは飛竜北野球部にバレているようだったが、それでも試合はほぼ明青野球部の勝ちで決まっていた。しかし、飛竜北野球部に諦めている選手はいない。実は、戸井田監督は新しい校長と揉め、今回の試合で負けた場合は野球部の監督を辞めることになっていたのだ。その契約について校長は周囲に言いふらしており、もちろん野球部員たちの耳にも入っていた。試合は明青野球部の勝利で終わったが、戸井田監督はニヤリと笑う。果たして契約時に書いた、覚え書きの内容は……?
飛竜北高等学校との試合が終わり、続いて発表された対戦相手は栄新高校。それは27年前の東東京大会準々決勝、走一郎と音美の実父・澤井圭一の選手生命が絶たれた試合の対戦相手だった。大山監督が当時のキャプテンでキャッチャーだったこともあり、千本木は「やりにくくないか?」と声をかける。当事者として心に傷を負ったままの千本木だったが、大山監督は呆れたように「何年経っていると思っているんだ? あの試合を覚えているやつなんかほとんどいない」と返す。公式戦での対戦は、その時以来。両校とも“出れば負ける”を繰り返していたためだったが、今年はどちらも久しぶりに戦力が整っていた。そんな中、グラウンドにはバッティングの調子が悪い遼の姿があった。芯を捉えず、大きく左にそれていく打球。そんな様子を撮影する亜里沙――その後、彼女が会って映像を見せていたのは遼の兄・智仁だった。遼の子供時代の写真と交換で、バッティングの様子を撮ってくることになっていたのだ。亜里沙はバッティングが上手くなるよう指摘してくれるのだと思っていたが、智仁は「今のまま力いっぱいのグリップでヒザを固くしたまま、内角を思い切り引っ張り続けてくれ」と言葉を残して去っていく。憤慨する亜里沙に対し、横で話を聞いていた間崎は「今の言葉をちゃんと伝えてやれよ」「仲のいい兄弟みたいだな」と声をかけるのだった。そして、それぞれが記憶と苦悩に向き合う明青学園VS栄新高校の試合が始まる。
27年の時を経て始まった明青学園VS栄新高校の試合。中々得点できない明青野球部員達に、動揺が広がっていた。その原因は大山監督の不安定な采配だ。27年前の試合中に起きた事故の当事者として、今回の試合を気にする千本木に「あの試合を覚えているやつなんかほとんどいない」と言葉をかけた大山監督。しかし今朝、その事故の夢を見てしまったことで気持ちがブレ、攻めの指示ができなくなっていたのだ。自身に言い聞かせるように、投馬へ全力プレーの指示を出す大山監督。一方の栄新高校。春夏の見立てでは、大山監督に悪夢がチラつくことでベースカバーが甘くなると読んで攻撃していたという。今回指揮をとっている監督は、当時、栄新野球部のキャプテンでキャッチャーだったのだ。強気な監督に対し、事故の話を聞かされたのか栄新野球部員たちの守備は控えめだ。そんな中で全力プレーの指示が出た明青野球部。チャンスを掴んだかに見えたが、姑息な隠し球で水を差される。果たして試合の結果は……?
全国高等学校野球選手権・東東京大会のベスト8が決定した。すべてシード校という中で、世間が特に注目しているのは明青学園と、元・須見工業高校である健丈高校の対戦。30数年前の夏を体験した大人たちにとって2校の試合は伝説なのだ。一方、 “自転車に乗った怪しい男”が立花家周辺をグルグルしながら音美を探しているという噂がたっていた。音美がパンチの散歩中に出会ったその男の正体は、西村だった。明青学園のグラウンド周辺で投馬に見つかった西村は「勢南とやるまで残れるか心配になった」と言い訳をするが、ピッチングをする夏野の様子を見て何故かイライラしてきた様子。ついに指導を始めてしまう。どうやら夏野のピッチングは西村と似たところがあり、欠点が手に取るように分かったことで我慢できなくなったらしい。投馬は「アドバイスに見せかけて潰す気では?」と心配するが、西村の表情はただ純粋に野球が好きな少年のものだった。指導を受けた夏野のピッチングは果たして……? そうして始まった東東京大会準々決勝。多くの期待を寄せられている明青学園と健丈高校、その注目のせいか実力はあるものの過小評価を受けている勢南高校。準決勝に駒を進めることになるのは、どの高校か?
全国高等学校野球選手権・東東京大会、準決勝に駒を進めた明青学園の対戦相手は勢南高校だ。ピッチャーの西村を攻略するため、明青学園野球部はフォームや球質の似ている夏野を練習台にすることに。“仮想西村”相手に調子が良さそうな部員たちを見て、満足げな大山監督。しかし、走一郎の提案で“もっと西村に似せた”夏野のボールを、部員たちはまったく打つことができなくて……!? 一方の勢南高校。対戦相手が決まってからほとんど寝ていない西村監督は、明青学園の資料を読み込み、とても嬉しそうだ。西村監督にとって特別な試合。その様子を見ていた部員たちは、勝利を誓っていた。超満員の明治神宮球場で、ついに始まった準決勝! 第一試合、健丈高校VS東秀高校。結果は5対3で健丈高校の勝利となったが、東秀高校が何度も追いつく様子は観客を魅了した。そして第二試合、勢南高校VS明青学園。西村監督は投馬の投球を研究しており、勢南高校野球部の実力を冷静に判断した結果、今回の試合に自信をのぞかせる。そんな中、マウンドに立って投球を始めた投馬。その姿を見た西村監督は呟く「あれは……誰だ?」
全国高等学校野球選手権・東東京大会、勢南高校VS明青学園の準決勝が始まった。調子の良さそうな投馬のピッチング。本人は「いつも通りだ」というが、試合に向けて投馬を研究していた西村監督と球を受け続けてきた走一郎は、突然の変化を感じ困惑していた。一方の西村も150km超えのストレートで明青打線を抑えていく。さらに、西村のカーブは走一郎を翻弄するほどになっていた。今までのデータがまったく役に立たない圧巻のピッチングが続き、ついに3回が終了しても両者無失点。ボールがバットにあたって前に飛んだだけでも大歓声が上がるほどの試合が続く中、勢南高校キャッチャー・田所が西村の球を捕り損ねたことで、明青学園の駒が初めて塁に出る。それでも闘志は衰えず、錦の送りバントは西村の送球によってダブルプレーとなる。激しい投手戦。果たして、決勝に進むのはどっちだ?
東東京大会準決勝第2試合は、西村と投馬の激しい投手戦が行われ、打たれても守備がしっかりとカバー。7回表まで両者無失点となっていた。投馬のパーフェクトゲームが見えてきたことに沸き立つ球場。そんな中でも投馬と走一郎は、冷静に目の前のバッターだけを見ていた。続く7回裏。西村の高速スライダーをかろうじてバットに当てた遼が塁に出る。初ヒットに盛り上がる観客たち。大山監督は2番バッターの室谷にある指示を出す。誰もが送りバントだと考えていたが、打席に立った室谷はフルスイング。当たり損ないのダブルプレーだけは避けたかった大山監督は、ランナーをそのままにして3番バッターの走一郎の長打に賭ける方が点につながる可能性が高いと考えていた。しかし、それを考えていたのは相手も同じ。走一郎は申告故意四球で塁に進むことになる。続いて打席に立った今川。西村がボールを投げようと足を上げた瞬間、遼と走一郎が走り出す。ダブルスチールは成功し、明青学園はワンアウト二塁、三塁というチャンスを掴んだ。「バットにさえ当たれば何かが起こる!」という大山監督の希望を受けた今川は、球を見事に打ち上げる。「外野まで飛んで犠牲フライ!」と叫ぶ大山監督をよそに、球は外野の芝生に落ちた。今川はタッチアウトとなってしまったが、遼と走一郎はホームイン! ついにこの試合初めての点が明青学園に入った。8回表、投馬の投げたボールは157km。打席に立った西村は、絶好調の投馬に翻弄されて終わるかと思われたが……。ついに勢南高校VS明青学園の試合が決着する!
東東京大会準決勝第2試合、勢南高校VS明青学園。激しい投手戦の結果は、明青学園の勝利で幕を閉じた。明後日の決勝戦、明青学園が戦うのは元須見工業高校の健丈高校だ。30数年前、多くの野球ファンに鮮烈な記憶を残した決勝戦が再びやってくる。特にこの戦いを心待ちにしており“今、世の中で一番舞い上がっている男”英介に電話をかける大山監督。しかし、その電話をとったのは音美だった――。その後の立花家。「トイレットペーパーを買い忘れた」という真弓の代わりに薬局へ買い物にやって来た投馬は、記憶喪失の男に出会う。彼自身の記憶が戻ったわけではないが、周囲の情報から自身が“原田正平”であること、“家族らしい連中”と過ごしていることを聞く。原田家に案内され、食事をご馳走になった投馬。そこで原田に声をかけられる「ちょうどこの時間だったな。勢南戦でおまえが西村にホームランを打たれたのは」――そして、父親である英介が亡くなったのも。
東東京大会決勝戦。健丈高校と戦う明青学園のピッチャーは夏野。投馬はというとレフトを守っていた。実の父親である英介を失い、試合には参加しているもののどこか上の空の投馬。この試合で投げさせないと判断したのは、誰よりも投馬のことを分かっている走一郎だった。「投げさせてほしい」「同情して手加減してくれるかもしれない」と自虐的に頼む投馬だったが、「そんな試合をお前の父親に見せたいのか?」という大山監督の言葉に返事をすることができない。夏野は9回3失点と健闘したものの、全国高等学校野球選手権・東東京大会は健丈高校が勝利したのだった。その数日後、友人を亡くしたことと試合に集中できなかった後悔で、ヤケ酒をしている大山監督の姿があった。「飲まずにはいられない」という大山監督の姿を見ていた春夏は「飲めない投馬たちはどうすればいいのか?」と立花家を心配していた。しかし学校で会った投馬は、これまでと変わらない様子だ。春夏は「元気そうでよかった」と安心するが、走一郎によると大切な真弓の誕生日を忘れるなど、どこかぼんやりと日々を過ごしているらしい。あの日、英介を襲ったのは心筋梗塞。会社の健康診断でも毎年全く異常がない、健康を絵に描いたような英介の死は誰にも予測できない突然のことだった。英介の出てくる夢にうなされて眠れず遅刻が増えているものの、部活に参加し変わらない投球を見せる投馬。明青野球部の新キャプテンになった走一郎。慣れない禁酒生活を始めた大山監督。それぞれが少しずつ変化していく中、向かうは秋季大会――。
大山家では、突然「泊りで温泉旅行に行く」と言い出した月影先生の話題になっていた。ここ最近、父・英介を失った立花家へ行き真弓と話をしており、月影先生なりの気遣いだということだ。一方、家族や友人たちに会っている記憶喪失の男こと原田は、明青学園を訪れていた。千本木も在学時の記録を探していてくれていたが、不自然なことに何も残っていないらしい。謎は深まるばかりだ。当時、ボクシング部に所属していたということで部活を覗きに行き、そこでたむろしていたOBをボコボコにしてしまう原田。「もう少し体を動かせば思い出せそう」というところで、キャプテンの大橋も餌食になってしまう。そして迎えた土曜日。真弓を温泉旅行に送り出した音美は、キッチンで夕食の準備をしていた。投馬が帰宅し、大山監督とミーティングをしている走一郎が戻ってきてから食事を始めようと話していた時、電話が鳴る。それは走一郎からで「OBに差し入れされたビールを大山監督が飲んでしまい介抱している」というものだった。その流れで、大山家の夕食をご馳走になることになったようだ。投馬と音美は二人だけでの夕食をスタート。話は自然と英介のことになる……。
真弓は月影先生と温泉旅行、走一郎は大山家で食事。それぞれ予定ができたため二人で過ごすことになった投馬と音美。英介について、走一郎について、そして初めて会った時の話……二人がコーヒーを飲みながら過去を振り返っていると、庭に何者かが侵入してくる。それは酔っぱらった原田だった。酔ったことで、ずっと生活していた庭のテントに帰ろうとしてしまっていたのだ。投馬と音美が二人で過ごしていたことを知った原田は「悪いことをした」と英介に線香だけあげて帰ろうとする。見送るため玄関へやってきた音美に、原田は「投馬を頼んだぞ」と声をかけるのだった。そうしてやってきた秋季大会。三年生の抜けた新体制で挑む明青野球部は、新メンバーも頑張っており絶好調! しかし、江戸川区野球場で始まった明青学園と南多良高校の試合でマウンドに立っている夏野は、投げる球を打たれ続けていた。相手が打線チームとはいえ、大山監督も思わず「打たれ過ぎ」と言ってしまうほどだ。その様子を見ていた投馬は「全体的にボールが高い」と指摘する。夏野の持ち味は“低めにコントロールされたキレのいい球”。それが見られない上に、抜け玉や逆球も多いのだ。ピッチャー交代となり投馬がマウンドへ。結局、試合は11対4で明青学園がコールド勝ちとなった。英介の想いを背負う覚悟ができた様子の投馬。悪夢にうなされ学校に遅刻することが増えていたが、音美が起こしに行くとしっかり目覚めており、真弓の話では朝食も食べきるようになったそうだ。真弓に見送られ、一緒に登校する三人。立花兄弟は今日も元気だ。